市立柏高校吹奏楽部の事件を受けて〜私たちがやらなければならないこと

2019年12月13日の朝。こんなニュース記事が流れてきて衝撃を受けました。

高2自殺、調査委設置へ 父「厳しい部活指導で過労の可能性」 千葉・柏

「毎日新聞」yahooニュース

明らかになった事件の概要

昨年12月に千葉県柏市立柏高校で2年生の男子生徒が自殺したことについて、柏市は12日、医師や弁護士らで構成する第三者委員会を設置して調査することを明らかにした。生徒の父親は毎日新聞の取材に「所属していた吹奏楽部の厳しい練習や顧問の指導で過労自殺に至った可能性がある」と主張している。市教委は「第三者委は教師の行きすぎた指導がなかったかについても調べる」としている。

生徒は昨年12月5日未明、同校の中庭で頭から血を流して倒れた状態で警備員に発見され死亡が確認された。

市教委は今年1月に「いじめと体罰は確認できなかった」とする調査結果を遺族に報告した。これに対し、父親は「息子は平日は7時間、土日祝日は12時間練習していた。2年生になってから休みは2日間だけ。それなのに報告では息子に何が起きたのか十分な回答がなかった」と話す。求めていた第三者委が設置されたことを受け、「真相の究明と、これ以上子どもの自殺がないように再発防止の観点から調査してほしい」と訴えている。

 同校は生徒数957人。吹奏楽部には200人超が所属し、全国大会の常連校と知られ金賞も多数獲得している。【加藤昌平、橋本利昭】

2019年12月13日「毎日新聞」

千葉県柏市立柏高校といえば吹奏楽業界では誰もが知る“名門”で、全国大会常連の強豪校です。

その市立柏高校、(通称「イチカシ」)で2018年男子生徒が亡くなっていたというニュース自体は知っていたのですが、

それがまさか吹奏楽部員で、吹奏楽部の活動による「過労」が原因かもしれない。

というのは、なかなかショッキングなニュースでした。

今回は、そんな彼の死を少しでも悼むために、そしてこの出来事を自分が「忘れてしまわないため」に今の想いを残しておこうと思い、筆をとります。

謎だった彼の死因と吹奏楽業界への警鐘

2018年に亡くなった当初、亡くなっていたのが学校の中庭で、

発見されたのが深夜だったこともあり、事件や事故など様々な憶測が出ていました。

千葉県柏市船戸山高野の市立柏高校で、男子生徒が死亡しているのが見つかりました。自殺や事故の可能性も。

発表によりますと12月5日午前2時15分ころ、柏市船戸山高野にある柏市立柏高等学校の中庭で、2年生の男性生徒が血を流し倒れているのが見つかったということです。

巡回中の警備員が発見し「男性生徒が中庭で倒れている」などと消防局に119番通報したことで発覚。

この通報を受け救急隊や警察官らが駆けつけたところ、男子生徒が意識不明の状態で倒れていました。

男子生徒は病院に救急搬送され、搬送先の病院で治療を受けましたが、間もなく死亡が確認されました。

千葉県警によりますと、現場や男子生徒の状態などから自殺や事故の可能性が高いということです。また、イジメの有無やトラブルは把握していない模様。

柏市教育委員会や柏高校は、生徒らのケアのためカウンセラーを派遣する方針です。

現時点では、遺書のようなものが見つかったという情報はありませんでした。

インターネット上では「柏高で男子生徒が死亡って誰だろう」「この高校って吹奏楽で有名なとこだ」「高校生が自殺か・・・可哀想だな」「母校で生徒の死体が見つかったとかショック」などと様々な声が多数みられました。

千葉県警は教員や生徒などから聞き込み調査をするとともに、当時の現場の状況などについて詳しく調べています。

2018年12月6日の記事より

そんな彼の死因が一年越しに明らかになり、

それが部活動の過度な練習や指導者による行き過ぎた指導などによる「過労」だった可能性があったのではないかと、彼のお父さんがおっしゃっています。

まだ真相の全てが明らかになったわけではありませんが、このことは一つの可能性としても

吹奏楽業界全体に対して、重く受け止めなければならない「問い」を残していると思います。

報われなかった彼の音楽への対する想い

個人的にも、音楽に携わる者として一番辛いのは、

「もう彼の音楽に対する想いは報われなくなってしまった」

ということ。

名門である高校の吹奏楽部に入ったということは

想いや夢もあったと思いますし、音楽や吹奏楽も好きだったのだろうと思います。

それが本当の理由がわからないとはいえ、自殺に追い込むことになってしまった。

本人も相当悩み苦しかったと思います。

私が感じた二つの問題

この出来事から私が感じた問題は、大きく2つありました。

一つは、

人間関係や心理といったソフト面(内面)の問題

そしてもう一つが

活動時間などの仕組みというハード面(外面)の問題です。

【人間関係(内面の問題)】

周囲の大人たちが気づき、救えなかったこと

彼はまだ高校生でした。

周りにいる大人には何かしら彼を守る術がなかったのだろうかと思うと、無性にやり切れない思いになります。

ご両親や彼に関わっておられた先生方もきっと本当に辛い思いをされたことと思います。

部活を辞めるという「積極的な逃げ」の選択肢を取れなかったこと

もし仮に部活が自殺の原因だったのだとしたら

“部活を辞める”という「積極的な逃げ」の選択肢をなぜ彼は取れなかったのでしょうか?

そこに過度に厳しい指導などがなかったことを心から祈ります。

【部の仕組み(外面の問題)】

普通科としてはハード過ぎる活動時間

父親が語った部活の活動時間を見てツイッターでも多くの驚きの声が上がっていました。

「息子は平日は7時間、土日祝日は12時間練習していた。2年生になってから休みは2日間だけ。…」

私も記事を読んだ時に、

これだけの練習量を「普通科の高校生」が授業や宿題などもこなしながら毎日確保するのは、あまり現実的ではないと端的に感じました。

残った部員を思うと

「部の仲間が亡くなった」

この事実は当時吹奏楽部にいた部員にとっては非常に重い出来事だったと思います。

吹奏楽はその性質上、「みんなで団結し何かをする」ことがどうしても多くなります。

吹奏楽は間違いなく個人種目ではなく団体種目です。

仲間とのつながりも強く、関係性が濃くなる分、
今回の事件による残った部員への影響は私たちが想像する以上に大きかっただろうと思います。

だからこそ、

残された大人や、吹奏楽部という「組織」自体がこの出来事から何を学び、部員に伝えるのか。部員の心にどう向き合うのか。

間違っても「フタをして奥にしまっておく」的な発想にだけはならないで欲しいと願います。

ご遺族の願い

今回、父親からの求めを受けて、柏市は第三者委員会を設置し自殺の死因を調査することを決めています。

柏市は12日、医師や弁護士らで構成する第三者委員会を設置して調査することを明らかにした。

2019年12月13日「毎日新聞」

これは、お父さんの中に学校や教育委員会の説明に対して何かしら

「腑に落ちていない点があった」ということなので、

「真相の究明と、これ以上子どもの自殺がないように再発防止の観点から調査してほしい」

2019年12月13日「毎日新聞」

というお父さんの想いを汲んでも、真実が明らかになって欲しいと思います。

部活動の「適正化」をする

平日7時間、休日12時間の練習をすることができる

というのはそれだけ

楽しくて、吹奏楽や楽器に魅力を感じている生徒がいる

ことを表していると思います。

おそらく、家族といる以上に仲間と過ごす時間が長い彼らの高校生活は非常に有意義なもので、そのことは、

柏高校吹奏楽部のパフォーマンスを見ればきっと感じることができます。

また、この一見長すぎるように感じる練習時間も、

「音楽を専門にして頑張りたい子にとっては苦のない練習量」

かもしれません。

なので(あくまで個人の一意見としてですが)、

普通科ではなく、「音楽科」や「普通科音楽コース」といった専門の科として吹奏楽を活動させていくことができれば、

彼らの負担も減り、より良い環境で音楽に専念すること

ができていくのではないかなと思います。

これまでも多くの人を笑顔にし、楽しませてきた柏高校吹奏楽部だからこそ、より良い吹奏楽部の在り方を見つけてくれたらと思っています。

吹奏楽業界の転換期

『吹奏楽』というジャンルに関して、
日本は世界的に見ても高い水準を誇っています。

特に高校生の吹奏楽コンクールの全国大会ともなるとそのレベルはかなりのもので、
今回話題となった市立柏高校も過去に何度となく「名演」を残してきました。

これは吹奏楽(部)の黎明期を必死になって支えつくりあげてきてくださった先生方や生徒が積み重ねてきた努力の結晶です。

しかし、その中で各校のレベルが上がり、

他より頑張らないと結果を残せない

という問題が自然と出てきたのだと思います。そして「、

「息子は平日は7時間、土日祝日は12時間練習していた。2年生になってから休みは2日間だけ。…」

2019年12月13日「毎日新聞」

という普通科としては現実的ではない練習時間や、それを「よし」とする風習が生まれてしまったのだと思います。

この事件を受けて、学校や教育委員会を叩いてみたところでそれは根本的な解決にならないと思います。

彼もきっと報われないと思います。

今、私たち残された大人がしなくてはいけないことは

「真実に向き合い、次の被害者を出さないためにすぐに動くこと」

「部活動の適正化を図ること」

ではないでしょうか。

「今までは誰も亡くなってなかった」
「生徒は、誰も文句を言ってきていない」

というのは大人側のエゴだと思うので、今回の事件、

「部活動の活動と練習量が、子どもの命を奪う可能性がある」

ということをまずは重く受け止め、変えていくことが求められているような気がします。

一人の子どもの命が失われてしまった以上、日本の教育現場で行われる部活動は吹奏楽部に限らず一つの“転換期”を迎えていると思います。

彼の死を無駄にしてしまわないためにも、

この事実を重く受け止め、「部活動の適正化を図ること」が教育や部活動に携わっている人にとっての急務だと感じます。

私たち大人に必要なこと

繰り返しになりますが、まず一番大切なのは、真実に向き合うこと、

彼に悪いことをしたと思う人全員が素直に「ごめん」と謝ること

です。

私自身、吹奏楽や音楽に関わっている一人の大人として彼の心境を想像すると本当に胸が痛みます。

私はこの出来事を、きっと忘れません。

こういう事件があったときに往往にして問題になるのが、その後の大人たちの対応ですが、

教育に携わっている人として「素直に謝る」という当たり前のことを大人たちが率先して行って欲しいと思います。

そしてその姿勢が、今現在吹奏楽部で頑張っている子どもたちにとっても「大人が出した一つの答え」になると思います。

「仕組み」を変える

その上で今後こんな出来事を二度と繰り返さないために

部活やそれを取り巻く学校の体制=「仕組み」

を本気になって変えていかなければいけないと感じます。

もし今回の父親の証言が真実で、彼の死因が「過労による自殺」なのだとしたら、非常に残念なことではありますが、

今の部活動の「仕組み」には命を奪ってしまう可能性がある

ということになると思います。

被害者は亡くなった彼で、加害者は部活動の「仕組み」なのです。

特定の誰かが悪いわけではないため問題がわかりづらいですが、こうなってしまった以上

「今までは大丈夫だった」
とか、
「部活ができなくなったら困る」

といった生ぬるいことを言っている場合ではなく、その「仕組み」自体を変えていくように、

変えることのできる力を持った大人が率先して動いていくことが必要です。

そして、私自身も吹奏楽に関わっている一人の大人として、この出来事を受け止め行動していかなければいけない、と心から思っています。

最後になってしまいましたが、亡くなった彼とそのご遺族の方の心境を察すると、本当に胸が痛みます。

心より御冥福をお祈りいたします。




—おわりに—

この記事は、「人の死」という非常にデリケートな問題を扱っております。

そして、それについて私の私見も踏まえて書いておりますことを末筆ながら補足させていただきます。

中には「それは違うよ」と思われたこともあったかもしれません。

もしそう思った方がおられましたらコメント欄などでぜひご意見ください。

この記事が真実を明らかにしてみんなで変えていけるきっかけになれば、、と強く思っております。

最後までお読みくださりありがとうございました。

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