このブログでは「吹奏楽(部)」にまつわる記事をたくさん書いていますが、そういえば「吹奏楽」に使われる「楽器」についてはちゃんと書いたことが無かったなとふと思いました。
特に吹奏楽に初めて関わる人にとっては意外と未知のジャンルである楽器編成。
今回は、そんな「吹奏楽」に使われる楽器を役割や特徴とともに、まとめていきたいと思います。
これから吹奏楽を始める人、「自分はどの楽器をやってみたいかな?」と悩んでいる人の参考になれば幸いです。
吹奏楽とオーケストラの違い
楽器紹介の前に、「吹奏楽の定義」を確認しておきます。
吹奏楽と同じような音楽を演奏する合奏体として「オーケストラ」がありますが、それぞれの編成の違いは、
オーケストラ=弦楽器+管楽器+打楽器
吹奏楽=管楽器+打楽器
と大きく分類されます。弦楽器を含むかどうかが一番わかりやすい違いといえます。
詳しくはこちらの記事もご参照ください。
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吹奏楽に使われる楽器
読んで字のごとく吹奏楽で使われる楽器の主体は、
「吹いて奏でる楽器」=「管楽器」
になります。そこに打楽器や場合によっては一部弦楽器を加えたものが吹奏楽の編成では最もポピュラーな編成ということになります。
それでは、その大部分をしめる「管楽器」について見ていきましょう。
管楽器編
管楽器はさらに「木管楽器」と「金管楽器」に分けることができます。
その分類の基準は、「どういう“仕組み”で音を出すか」になるのですが、ざっくり言うと、
木管楽器…唇を振動体にして音を出さない楽器(=外部の振動体(リード)を音にする楽器)
金管楽器…唇(=自分の体の一部)を振動体にして音を出す楽器
ということになります。唇で音を出す楽器が金管楽器でそれ以外は木管楽器と覚えておけばほぼ間違いありません。
ちなみに時代劇の戦などで使われる「ボーーーーッツ」という音の“ほら貝”も唇をつけて音を出しているので金管楽器です。
それでは、「木管楽器」と「金管楽器」それぞれについて音の高い順(スコア)順でご紹介していきます。
木管楽器
それぞれの楽器が「高い機動性」を持ち難しいパッセージを軽やかに吹きこなすことができる木管楽器。木管楽器は全部で大きく5つの楽器(パート)があります。
フルート(Flute)
おそらく管楽器で最も名前を知られている楽器の一つ。それが「フルート」でしょう。
- 空気を振動させて音を出す「エアリード楽器」
- いわゆる横笛で、「華やかな音色」と優雅な吹き姿から女性人気の高い楽器。
- 音域は吹奏楽においては最も高く、「メロディー」を担当することも多い。
- 合奏では最前列に座ることが多く、基本的に「常に目立つ楽器」。
- 曲によってはフルートのさらに半分の長さの「ピッコロ」という楽器を持ち替えて演奏(*ピッコロの音域はフルートのさらに1オクターブ高い音域。)
オーボエ(Oboe)
(画像:Musician’s Friend)
学校によってないことも多い楽器ですが、存在感抜群な楽器。それが「オーボエ」です。
- 2枚のリードを振動させて音を出す「ダブルリード楽器」
- チャルメラにも似た形で少し「憂いを帯びたような音色」が特徴。
- 音域はフルートに次いで高く、他の楽器にはない音色で「ソロ」を担当することも多い。
- ギネスに登録されている「一番難しい木管楽器」。
- 同族の楽器に「コールアングレ」というやや低音域の楽器がある。
クラリネット(Clarinet)
吹奏楽においてメロディーパートを支える中心楽器で必要不可欠な楽器。それが「クラリネット」です。
- 1枚のリードを振動させて音を出す「シングルリード楽器」
- 音域によって音色が違う楽器で「暖かい低音」「鋭い高音」と幅広い音色が特徴。
- 音域は中〜高音域と広くセクションとしてまとまる「アンサンブルメロディー楽器」。
- オーケストラでいうヴァイオリン。メロディーを担う「花型かつ重要な楽器」の一つ。
- 楽器の種類も多く高い音から順に、
「エス・クラリネット(高)」
「ベー・クラリネット(中〜高」☆
「アルト・クラリネット(中)」
「バス・クラリネット(低)」
とクラリネットファミリーを形成していて、セクションによるアンサンブルも魅力の楽器。
「☆」の「ベーー・クラリネット」が一般的ないわゆる「クラリネット」です。
サクソフォーン(Saxophone)
(画像:ヤマハミュージックリテイリング)
通称「サックス」オーケストラにはないけれど、吹奏楽においてはそのビジュアルもあいまって人気の高い楽器の一つです。
- 1枚のリードを振動させて音を出す「シングルリード楽器」
- 色っぽい音色から金管楽器のような力強い音色まで音色・音量の幅が広い楽器。
- 音域は楽器によってそれぞれ低〜高音域と広くメロディーから伴奏までなんでもこなす。
- 木管楽器の機動性と金管楽器の音量を兼ね備えたハイブリットな楽器。
- 楽器の種類は多く、音域順に、
「ソプラノ・サックス(高)」
「アルト・サックス(中〜高)」☆
「テナーサックス(中低音)」
「バリトン・サックス(低)」
「バス・サックス(低低)」
と種類豊富で、「サクソフォーンカルテット(四重奏)」といったアンサンブルも一般的な編成として完成度が高い、まとまりの強い楽器。
「☆」の「アルト・サックス」が一般的ないわゆる「サックス」です。
ファゴット(bassoon,fagotto)
(画像:ヤマハミュージックリテイリング)
オーボエ同様ない学校も多いけれど、編成に入ることで低音にグッと深みとキャラクターを加える縁の下の力持ち楽器。それが「ファゴット」です。
- 2枚のリードを振動させて音を出す「ダブルリード楽器」
- 「おどけたような音色」や歯切れの良いスタッカート(短い音)が特徴。
- 音域は低いが、高音も出すことができ、その間を行き交う「跳躍」が得意。
- 合奏で聴こえることは少ないが、人知れずみんなを支えてる、まさに「職人楽器」。
- 同族の楽器にさらに低い「コントラ・ファゴット」という楽器がある。
金管楽器
金属製と言う強みから生まれる「音量」と、全ての楽器が「マウスピース」と呼ばれる同じ振動体を持つことから生まれる美しい「ハーモニー」が最大の武器の金管楽器。金管楽器はも大きく全部で5つの楽器(パート)があります。
トランペット(Trumpet)
フルートに並んでおそらく最も有名な管楽器の一つ。それが「トランペット」です。
- 唇を振動させて音を出す「リップリード楽器」
- 別名「王様の楽器」。「華やかな音色」と「突き抜けるような高音」が魅力。
- 音域は金管楽器中最も高く、「メロディー」を担当することが多い。
- ストレートな音色と存在感で逃げも隠れもできない、吹奏楽における「これぞ花形楽器」。
- 曲によってはトランペットのさらに半分の長さの「ピッコロ・トランペット」という楽器や、少し柔らかい音色を持つ「フリューゲルホルン」などを持ち替えて演奏することもある。
ホルン(Horn)
吹奏楽における役割が近年急上昇している楽器で、木管とも金管とも溶け合うことができるブレンド楽器。それが「ホルン」です。
- 唇を振動させて音を出す「リップリード楽器」
- カタツムリ型の見た目と、後ろに向いたベルが特徴。ふわっと広がる「泡のような音色」。
- 音域は低音から高音まで幅広く木管と金管を混ぜ合わせる「ブレンド楽器」。
- ギネスに登録されている「一番難しい金管楽器」。
- 右手をベル(音が出る部分)の中に入れながら演奏するため「ゲッシュトップ奏法」などこの楽器にしか出せない音色が多くある。
トロンボーン(Trombone)
(画像:ヤマハミュージックリテイリング)
管楽器の中でも昔から原型が最も変わっていない「スライド」という仕組みを持つ楽器。それが「トロンボーン」です。
- 唇を振動させて音を出す「リップリード楽器」
- 別名「神の楽器」。古くは教会で歌の伴奏も行った神聖な楽器で「人の声に最も近い音色」とも言われる。
- 音域は中低音で2〜4本で織りなす「ハーモニー」がバンドのサウンドを決める。
- 伸び縮みする「スライド」で音階を奏でるスライド奏法が特徴的。自然と「耳」が鍛えられる。
- オーケストラなどで見かける「アルト・トロンボーン」と低音を担当する「バス・トロンボーン」がある。サックス同様「トロンボーンカルテット(四重奏)」のハーモニーは絶品。
ユーフォニアム(Euphonium)
サックス同様オーケストラにはないけれど、吹奏楽においては欠かすことのできない「万能楽器」。それが「ユーフォニアム」です。
- 唇を振動させて音を出す「リップリード楽器」
- ユーフォニアムという名前は「よく響く」というギリシャ語に由来。包み込むような「暖かい音色」が特徴。
- 音域は中低音で「メロディー」「対旋律」「バス」と本当になんでもこなす。
- 管楽器の中では最も新しい楽器の一つで、「機械的」にも完成されている楽器。
- 金管楽器でありながら木管と同じような早く技巧的なパッセージも演奏できる中立的な楽器。
チューバ(Tuba)
(画像:MUSIC STORE)
管楽器中最低音を担当する音も見た目も「規格外な楽器」。それが「チューバ」です。
- 唇を振動させて音を出す「リップリード楽器」。
- 約10kgの巨体が特徴。揺るぎのない音量と存在感でまさに「圧倒的な低音」。
- 音域は低音でバンドの全メンバーを支える「土台楽器」。
- “管=チューブ(tube)”が名前の語源。その意味では「金管楽器の帝王」。なので移動も大変。
- プロになるとソロ演奏にも適した少し小さめの楽器「F管チューバ」を持つことも多い。
弦楽器編
「吹奏楽は弦楽器のない編成」と最初に言いましたが、実は一種類だけ吹奏楽に用いられる弦楽器があります。ここでは、そんな稀有な楽器を紹介します。
コントラバス(Contrabass, Stringbass)
- 弦を振動させて音を出す「弦楽器」。
- 立って弾いている見た目が非常に目立つ。その音は「深く包み込むような低音」。
- 音域は低音で、バンドを支える「バスパート」を担う。
- 低音セクションに一気に深みを添える「いぶし銀低音楽器」。
- 元々は吹奏楽において低音楽器のパワー不足を補っていた時代の名残で今も残っている。でも残っているということこそ、まさにその「存在理由」でもある。あるとないとでは大違いな楽器。
打楽器編
最後にこれも管楽器同様吹奏楽に欠かせない楽器である打楽器を紹介します。その種類は数百から数千とも言われるので詳細は省きますが、特に重要な楽器いくつかを「太鼓系」と「音盤系」および「小物系」として挙げておきます。
太鼓系
「皮もの」と呼ばれることもある、文字通り貼ってある皮を振動させて音を出す楽器です。
スネアドラム(Snare Drum)
- いわゆる「小太鼓」。打楽器奏者にとっての全てが詰まっている楽器と言っても過言ではない。この楽器が打楽器の基本。
- 吹奏楽においては、細かい流れるような「グルーブ感」やキメとなる「リズム感」を生み出す。
バスドラム(Bass Drum)
(画像:ヤマハ)
- いわゆる「大太鼓」。音数は多くはないが一音の重みが違う。その響きでバンドを下から支える。
- 吹奏楽においては、全体的な「テンポ感」や心臓のような揺るぎない「ビート感」を生み出す。
ティンパニー(Timpani)
(画像:Mitsuda’s Diary)
- 太鼓系唯一の「音階を奏でることができる太鼓」。オーケストラにおいては「第二の指揮者」と呼ばれることもある。この楽器が上手いだけでバンド全体の音楽が急に広がったように感じられる。
- 吹奏楽においては、バスドラムの要素に加えて、「音」があることで低音を「より和声的にサポート」する。
鍵盤系
音階順に並んだ鍵盤を叩くことでメロディーやハーモニーを奏でることのできる打楽器の仲間です。
グロッケン(Glockenspiel)
(画像:gakki.com)
- いわゆる「鉄琴」。透き通るような音色や輝くような音色が特徴でホールでも非常によく通る。
- 吹奏楽においては、フルートなどの木管楽器と一緒に「メロディー」を担当することが多い。
ヴィブラフォン(Vibraphone)
(画像:ヤマハ)
- グロッケンより一回り大きな金属製の鍵盤楽器。ビブラフォンの「Vib(ヴィブ=ヴァイブ)」は「音の震え」のことで「音をふるわせる」すなわち“ヴィブラート”をかけることができる。
- 柔らかく「神秘的な」音色が特徴的。
- 吹奏楽においては、メロディー以外に「ハーモニー」を担当することも多い。
シロフォン(Xylophone)
(画像:ヤマハ)
- 乾いたような音色が特徴の木製の鍵盤楽器。
- 「乾いた音色」が特徴。
- 吹奏楽においては、グロッケン同様木管楽器と一緒に「メロディー」を担当することが多い。
マリンバ(Marimba)
(画像:ヤマハ)
- 鍵盤楽器中、最も大きなサイズをもつ楽器。表現の幅が豊かでこの楽器のために書かれたソロ曲(独奏曲)も多い。
- 吹奏楽においては、ヴィブラフォン同様「ハーモニー」を担当することが多い。
小物系
打楽器の中でも「小物系」はあまりにも種類が豊富なので名前だけ…
シンバル、トライアングル、タンバリン、カスタネット、アゴゴ、ヴィブラスラップ、ウインドチャイム、ギロ、クラベス、コンガ、ボンゴ、スレイベル、銅鑼、、、etc
本当にキリがありませんが、全部に共通していることは「その曲のその場面に合った音色を生み出すために必要な楽器」ということです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。吹奏楽に使われる主な楽器、
- 管楽器10種類
- 弦楽器1種類
- 打楽器7種類
の18種類をご紹介しました。
もちろん編成や曲によって多少変わってくることもありますが、基本的にはこれらの楽器で編成され、その音を重ねてつくられる音楽が「吹奏楽」です。
また、それぞれの楽器にはそれぞれの役割があり、どれも唯一無二の素晴らしい存在です。
なので、これから初めて吹奏楽に関わる人は「自分に合った楽器」でも「そうでない楽器」でもその魅力を探してみながら取り組んでもらえたらと思います。
最後までお読みくださりありがとうございました。
「吹奏楽」という言葉は日本ですっかりおなじみとなりましたが、「吹奏楽に対応する英語は何?」と言われると、意外とわからなかったり、年齢によってその呼び名が違ったりします。 今回はそんな吹奏楽の英語名やそれに似た編成の呼び方をまとめて紹介して[…]