この記事は下記の記事の続きです。
最初にお断りをさせてください。
この記事を書いている本人は声楽専門ではありません。管楽器専門です。
なので、専門の方から見たら「ん?違うぞ」と思うこともあるかと思います。
そんな時はぜひ「もっとこうすると良いよ!」というコメントをお寄せください。
ここに書いている内容はある程度自分の基づいた「割と上手くいったこと」ですがあくまでも一つのやり方なのでそれを理解したうえでお読みください。
歌の授業の発声練習をこんな感じで進めています。
①姿勢
②頭声と地声
③母音
④子音
⑤ハーモニー
番外編:ブレス
まずは①姿勢から。大切だとわかってはいるもののなかなか有効な指導法が見つからないという先生も多いんじゃないでしょうか。
①歌う時の姿勢について
色々な指導方・考え方があると思いますが、意識したのは
『余計な力は抜いて、フラフラしない、勝手にいい声になる姿勢の作り方』
です。それを踏まえて全部で3つに分けて確認していきます。
姿勢【腕】
考え方
基本的には脱力。歌う時に腕を使う必要は基本的にありません。
腕を前や後ろで組むと、肺が圧迫されてしまうので体の横に自然な状態で脱力しておきます。
姿勢の練習方法
腕を思いっきり上に伸ばしてから一気に脱力します。自然に落ちた位置からは、もう力を入れないようにします。
姿勢【下半身】
考え方
重心は体の前半分に乗るようにします。体重を歌声に乗せるイメージ。
両足に均等に重心がかかっていればフラフラすることもできなくなります。
やり方
足を楽に開いた状態で、かかとを上げて”つま先立ち”します。そこからかかとに紙一枚入るような気持ちでゆっくりそーっとかかとをつけます。すると、身体の前の方に重心がある状態が作れます。
姿勢【顔】
考え方
「勝手にいい声の出るポイントにあたる」状態をつくります。前重心の状態で、あごは軽く引いて目線だけ上げます。目線は前の人の頭を超えるくらい。
この3つをクラス全員でやってみると、かなり「歌えそうな集団」ができます笑
音楽を専門にやっていると経験があるかもしれませんが、コンサートで舞台に出てきた瞬間、まだ一音も音を出していなくても「良い音しそうだな」という姿勢の人はやっぱり実際も良い音です。
姿勢が一番簡単だけど一番大切です。
②頭声と地声
続いてやったのは「頭声と地声」の発声練習。頭声というのはいわゆる裏声のことです。この練習では
『基本的な声の響かせ方を知っておく』
ことが一番の目的です。
加えて、音程を取るのが苦手な子に多いのですが裏声で歌ってみるときれいに音程が取れるというのも裏声で発声練習しておくことのメリットです。
やり方
男子も女子も高いレ(2点ニ)の音を裏声で出します。
レドシラソーの形で半音ずつ下行していきます。
そのまま1オクターブ下行していき、低いソの音で終わります。
このとき、ミ(1点ホ)・ファ(1点ヘ)あたりで裏声がコントロールしづらくなるのでそこで頭声の響きを保ったまま地声にチェンジしていくよう指導します。
この練習をしておくことで、実際の曲を歌う時でも音域やパートによって「(響きを意識した上で)声を使い分ける」ことのできる生徒が増えました。
③母音
これはまず「母音っていうものがあるんだよ」っていうことを認識させるだけでもかなり効果がありました。
その上で母音を発声練習する目的は
『母音で音程を取れるようになる』
ということです。
日本語には母音と子音がありますが”k”や”s”といった子音には音程をつけることはできません。
音符に表される音程を取っているのは基本的に母音なので、母音だけを取り出す発声練習はとても効果的です。
やり方:
まずは音を付けずに言葉として確認していきます。
唇を脱力してからはじめます。おすすめは「リップロール」と呼ばれる唇をぶるぶる振動させるエクササイズです。(中学生だと恥ずかしい子もいると思うので手で口を隠してやると良いです。)
「あ(a)」…ほっぺたを自分の手を使って上に上げます。その状態をほっぺたの筋肉を使ってキープするように意識して手を離します。そこから口を指が縦に2本入るくらい空けます。声を出すと自然に明るい「あ」になります。
「え(e)」…「あ」の状態から口角を後ろにひっぱるように動かしていくと「え」になります。
「お(o)」…「あ」の状態からほっぺたと唇を突き出すと「お」になります。
「い(i)」…「お」 の状態から口角を後ろにひっぱるように動かしていくと「い」になります。
「う(u)」…「お」の状態から唇をたてにすぼめると「う」になります。
こうすることで「この母音はこうする」というような目安ができます。
これを言葉だけで繰り返して確認した後に音程をつけます。
「あえいおう」の順番で「ドレミレドー」の音形で上行していきます。
ソプラノ担当の女子などは高い声をしっかり出す練習にもなるので、高いソ(2点ト)くらいまでは出しておくといいと思います。
ちなみに、実際に曲の練習になったときには「母音だけで歌ってみる(母音唱)」のがおススメです。
母音唱を練習の間に挟むことで、なんとなくぼやけていた音程や言葉がしっかりしてきます。
④子音
いつだったか高校生の合唱コンクールを審査させてもらった時に全クラスで1クラスだけ高3のクラスが子音を意識した合唱を作っていて、それはそれは「言葉が伝わる素晴らしい合唱」でした。
もちろんそのクラスが金賞をもらっていました。
ここまでの①〜③に比べると少し難しくなりますが、クラス全体で意識ができると非常に良い合唱につながるのが子音です。目的は
『言葉をはっきりと伝えるために気をつける子音を知っておくこと』
です。同じ子音の中にも「伝わりづらい子音」があることをわかっているだけでも意味があると思いますし、その知識は指揮者やパートリーダーなどが「何を気をつけたらわからない」という場合のアドバイスとしても役に立ちます
やり方まずは「伝わりづらい子音」を知ります。主に、
k(カ行)
s(サ行)
t(タ行)
h(ハ行)
の4つです。実際に言ってみるとわかりますが、かなり不明瞭になりがちなのがこの4つです。
たとえば山崎朋子さんの有名な合唱曲に『大切なもの』という曲がありますが、この曲の歌い出し
♪そらにひかるほしをー
は、「そ」「ひ」「か」「ほ」「し」と言いづらい言葉のオンパレードです。
これをもし歌詞が知らない状態で聴くと
♪おらいいあるおいをー
みたいな感じになってさっぱり歌詞が聞き取れないという現象が起きます。
この言いづらい子音を確認したら、
あえいおうえあ
かけきこくけか
させしそすせさ…
の順で五十音を言っていきます。慣れないうちは黒板に母音と子音を書いておくのも良いかもしれません。
慣れてきたら音をつけていきます。
音程は③母音の時と同じような感じで「ドミソラソミドー」の音形で半音ずつ上行させていきます。(Adur イ短調で終わります)
母音から続けてやるときは割とアップテンポでやったほうが子供も飽きずにできる気がします。
きっと日本語の子音ひとつ一つに聞かせるための技術もあるんだと思いますがあんまり細かくやり過ぎても混乱してしまいそうだし何より僕がそこまで突っ込んで知らないので、このくらいにしておきます。
⑤ハーモニー
①〜④までやるとなんやかんやで声も出るようになっているので、最後に簡単なハーモニーを組んでみます。いわゆる「ハモる」です。
やり方はシンプルで(これは自分の分野である吹奏楽でよくやる練習の一つなんですが、)
テノールに「ド(一点ハ)」の音
ソプラノに「ソ(一点ト)」の音
アルトに「ミ(一点ホ)」の音
を歌ってもらいます。順番はテノール→ソプラノ→アルトが合わせやすいので、その順番で重ねたりみんなで同時に歌ったりします。
やっぱり合唱の醍醐味はこのハーモニー、ハモる感覚だと思っているので綺麗なハーモニーができると「なんか良いやん」みたいな空気になります。
これで一通りの発声練習は終わりということにしています。
番外編:ブレス
番外編とか言ってますがほんとは姿勢と同じかそれ以上に大切ですよね笑
ただ一番すぐには実感しづらい割に練習としても退屈になりやすいので発声練習の中には組み込んでいません。
それでも朝一の合唱やなんとなく声が出づらい時に少しでもやってみると意外と効果があったりもします。
やり方
4拍かけて息を吸います。鼻から吸うのも◯。
↓
12拍かけて息を吐きます。中学生くらいだと吐く力も弱いので、この時に歯と歯の間から「スーッ」と音を出しながら吐くようにします。
そうすることでほどよく抵抗感が生まれて中学生でとお腹で支えながら吐けるようになります。
これを2〜4セットくらいやるだけでだいぶ息を吸ったり吐いたりする感覚がわかって声が出しやすくなるのが実感できると思います。
これが俗に言う腹式呼吸です。
ちなみに、人間寝ているときはみんな腹式呼吸をしているので、時間があるときは壁に背中をつけてやってみると「お腹で息をしている感覚」がつかみやすくなります。
ここまでが僕が音楽の授業で取り入れてみた発声練習です。毎回全部やるのは大変だとおもうので、その日の発声練習!みたいな感じでくじ引きとかで決めてやるのも面白いかもしれませんね。
まだまだ僕自身も悩みながらやっているのでもっと良い練習やオススメの方法がありましたら是非コメント欄にて教えてください。
この記事が今、合唱や発声練習に悩んでいる先生たちの話題のタネになれば良いなあと思います。