中学生である程度活発なバンド〜高校生の小編成程度を想定した吹奏楽コンクールの2022年選曲用記事です。
2023年選曲用の記事はこちら。
外国作曲家の作品
センチュリー・ヴァリアンツ (ギリングハム, D)
アメリカの吹奏楽作曲家ギリングハムの作品。
金管楽器の奏でる華やかなオープニングから疾走感のある曲調が続く。目まぐるしく場面は変わるが、テーマを変奏する形をとっているため統一感も保たれている。
打楽器と金管楽器に比重が高く特に打楽器は終始活躍するのでメンバーが揃っている団体にはおすすめ。
活躍度合い(≒難易度)
木管:7
金管:8
打楽器:9
Rhapsodic Celebration/Robert Sheldon
こちらもアメリカの作曲家R.シェルドンの作品。彼のポリシーは「和声の豊かさ、響きの美しさ、表面的な効果よりも音楽的な中身と教育的な意味を優先する」。
木管だけでなく各楽器にいわゆる「連符」も多く、非常に歯応えのある楽曲。ホルンの勇ましいファンファーレから開幕し、浮遊感のあるオープニングがかっこいい。その後アルトサックスソロに導かれる【中間部】では、明快な和声感でゆったりとしたコラールが奏でられる。
【終結部】ではアルヴァマー序曲の終結部のような目まぐるしい木管楽器の連符と金管打楽器が効果的に使われている。中学生でコンクールを頑張りたい場合におすすめ。
活躍度合い(≒難易度)
木管:7
金管:7
打楽器:6
Iberian Escapades: The Villas of Boca Raton
同じくR.シェルドンの作品。エスニックなオープニングはコンクールなどで演奏された際に他の学校との差別化もしやすい。先に出てきた「Rhapsodic Celebration」に比べると情景的な音楽描写で、中学生だけでなく高校生バンドにもおすすめ。
A.リードの『春の猟犬』的な躍動感ある音楽でトロンボーンのグリッサンドと共に最後は幕を閉じる。
活躍度合い(≒難易度)
木管:7
金管:7
打楽器:7
Art In The Park /Robert Sheldon
こちらもR.シェルドンの作品。前出の2つに比べると難易度も上がる(ちなみにここまでの3曲は難易度順になっています)ため、技量的にもレベルが安定しているバンドにおすすめ
ウィズ・ソウル・セリーン
静かで序章的な始まり。海の中を思わせるようなやわらかん雰囲気の中オーボエのソロで幕を開ける。終始穏やかなテンポの中で曲は進む。途中一度快速部を挟むが、打楽器も含めた各楽器対比的なオーケストレーションが秀逸。たっぷりと歌わせることができるバンドにおすすめ。終結部はまた冒頭の柔らかな空気が再現されて曲を締めくくる。
活躍度合い(≒難易度)
木管:7(ob)
金管:7
打楽器:7
サイプレス・プレリュード
大木を表現した楽曲。冒頭打楽器→ホルンと壮大に始まる。その後もホルンソロが続くなどホルンの名手がいるバンドにおすすめ。【快速部】では各楽器によるフーガがクラリネットを皮切りに展開される。やや諧謔的なフレーズも散りばめられており全体的にキャラクター性が強い。【中間部】ジブリを彷彿とさせるようなドラマチックかつ牧歌的で歌心のあるフレーズが続く。シンプルな作りだが味わい深く音楽的にも勉強になる楽曲。
活躍度合い(≒難易度)
木管:7(Alt.sax)
金管:8(hr)
打楽器:6
Fate of the Gods/Steven Reineke
中学生でも取り組みやすいシンプルな構成かつ難易度も高くない楽曲ながら説得力のある音楽やしっかりとした「キメ」もあるため演奏効果が高い。
【冒頭】金管楽器中低音による不気味なはじまり
→【快速部】打楽器に先導され攻撃的なテーマが演奏される。
→【中間部】トランペットをはじめソロによる“平和的”な展開を挟み
→【終結部】トランペットのファンファーレからベルトーンも挟みながらまさに運命的な全奏tuttiを奏でた後中間部の優しいコラールが現れ『救済』へと向かうようなドラマティックな展開で幕を閉じる。
活躍度合い(≒難易度)
木管:6(ob.)
金管:8(hr./tp.)
打楽器:6
Symphonic Suite / Clifton Williams
日本の吹奏楽を今の地位まで押し上げたF.フェネル×東京佼成ウインドオーケストラの演奏。
1.Intrada / 2.Chorale / 3.March (1~3はatacca.で演奏される。)
4.Antique Dance / 5.Jubilee
【冒頭 1.Intrada → 2.Chorale】トランペットのファンファーレから始まるオープニングから緩やかなテンポでユーフォニアムとトランペットの掛け合いが行われる。
【快速部 3.March】トランペットからクラリネットへと続くホルストの第一組曲のマーチのような曲想の展開。【→急速部】ホルンの刻み、トロンボーンのグリッサンドなどが効果的な
【中間楽章 4.Antique Dance】アルメニアンダンスを彷彿とさせるような木管楽器による舞曲的楽章。クラリネットやフルートなど木管楽器の静かなテーマと金管楽器・打楽器による躍動感ある部分との対比が効果的。
【最終楽章 5.Jubilee】打楽器のリズムに乗せて各楽器によるテーマが演奏される。トランペットとトロンボーンによるユニゾンを境に切迫していき最高潮を迎え壮大な金管楽器によるコラールを挟み楽曲は幕を閉じる。
吹奏楽コンクールは元より定期演奏会などでも取り組みたい非常に音楽的にも充実した楽曲。
活躍度合い(≒難易度)
木管:8(fl.)
金管:8(euph./tp)
打楽器:6
邦人作曲家の作品
エンジェル・イン・ザ・ダーク/田村修平
疾走感のあるオープニングに続いてファゴット、オーボエのソロの掛け合いへと続く。ダブルリード楽器のない学校はどの楽器で置き換えるかを楽器のバランス生徒の素質などとも併せて考えたい。
わかりやすいメロディーラインや変拍子も効果的に組み込まれ飽きのない楽曲構成になっている。指揮者にもある程度のスキルが必要。
【中間部】木管楽器セクションによる叙情的なフレーズを経て、トランペットのファンファーレを迎えドラマティックな【終結部】へと向かう。フィナーレも非常に厚く書かれているので金管を中心に“鳴らせる”バンドにおすすめ。
活躍度合い(≒難易度)
木管:7
金管:7
打楽器:7
https://www.musicabella.jp/concours/viewfree/flag:s/work:6645/
プンタン・ドス・アマンテス/加藤大輝
【前半】フルートソロから始まる冒頭が印象的。シンプルな話声とわかりやすい音楽。ドラマ性も高い。トランペットの“歌う”メロディも多い。アルトサックスソロあり。【後半】打楽器から始まる6/8拍子はホルストの組曲を彷彿とさせる。アルトサックスソロwithピアノ。終結部では、金管のファンファーレから低音まで活躍しドラマティックな終結。
活躍度合い(≒難易度)
木管:7(fl/alt.saxsolo)
金管:7
打楽器:7(timp.solo)
フォー・スターズ・オブ・トゥモロウ/長生淳
ピアノから続く木管楽器の華やかなオープニング。随所に長生作品らしい和声やリズムも使われ、難解さを感じる雰囲気の中にも一本の大きな音楽の流れを感じることのできる作品。ソプラノサックスのソロを境に幸福感ある音楽へと続き終曲。
活躍度合い(≒難易度)
木管:7(ob./sop.sax)
金管:6
打楽器:6
フライト・エターナル~アメリア、聞こえていますか?/樽屋 雅徳
消息を絶った女性パイロットの物語を描いた楽曲。感情移入しやすい題材を樽屋氏らしいわかりやすい音楽で紡いでおり中学生から取り組みやすい。【冒頭】木管楽器による序奏を経て、フルート、サックスのメロディーが印象的なワルツへとつながる。【快速部】戦闘シーンのような展開部分では各楽器が目まぐるしくうつり変わる。【叙情部】では再び冒頭のテーマがピアノのソロに導かれフルートの独奏を以って表現される。最後は豊かなtuttiへと繋がり、主人公の勇敢さ、悲しさ、儚さといった感情の重なりをうまく表現しながらストーリーを締めくくっている。
活躍度合い(≒難易度)
木管:8(fl./ob./e.hr.)
金管:6(eu.)
打楽器:7
https://www.musicabella.jp/concours/viewfree/flag:k/work:8561/division:b/
「ライオン・キング」より/H.ジマー、E.ジョン、レボ・M、(森田一浩)
吹奏楽を代表する名アレンジャー森田一浩氏の編曲による楽曲。2006年の初演から15年を経て2021年に出版された。
森田氏お馴染みのシンフォニックな構成になっており、おそらく誰もが知っている楽曲としては最後の「サークルオブライフ」程度。物語自体は中高生でも親しみやすい上に音楽的な魅力も世界を席巻するディズニー音楽ということで申し分ない。【冒頭】からフルートのソロではじまるなど終始フルートが活躍する。
活躍度合い(≒難易度)
木管:7(fl.)
金管:7(eu.)
打楽器:7
Viv as an Oak (ヴィヴ・アズ・アン・オーク)/高 昌帥
タイトルは、アルフレッドリードの「Viva Musica!」をもじって付けられている。グレード4.5となっておりファゴット、イングリッシュホルンなどの小編成には馴染みの薄い楽器も使われているが、グレードの割には取り組みやすい印象がある。感動的なクライマックスも難曲らしい。
活躍度合い(≒難易度)
木管:8(fl./ob./e.hr.)
金管:8(eu.)
打楽器:7
「烏山頭」~ 東洋一のダム建設物語/八木澤教司
【冒頭】コラール風の壮大なオープニングから金管楽器のファンファーレを挟み感動的なハーモニーを奏でる。
【東洋風な和声が使われ、エキゾチックな雰囲気も併せ持つ楽曲。各声部はわかりやすく構築されているが、間延びさせずに聞かせるための音楽的な構成も必要。途中ソプラノ(歌)が出てくる。
活躍度合い(≒難易度)
木管:6(fl.)
金管:6(tp.)
打楽器:5
ニライカナイの海から/真島俊夫
南国沖縄に伝わる伝説をもとに作られた楽曲。真島作品らしいフランス的な雰囲気のある楽曲で【冒頭】はレスピーギのローマ三部作も彷彿とさせる。打楽器に続いて木管楽器によって奏でられる沖縄的なテーマを元にエイサーのような“祭り”の雰囲気へと続く。
【中間部】各種木管楽器によるソロとそれに応えるホルンとの掛け合いが続く。沖縄の自然(風、海。。。)を感じる雄大な中間部。非和声音的なトランペットのファンファーレが次第に存在感を増していき、盛り上がり終結部へと続く。
【終結部】再びレスピーギ作品のような展開。これまでに出てきた各モチーフが凝縮されて現れ、木管楽器によるエイサー、金管楽器によるファンファーレが互いに掛け合いを重ね最後はバンダまで登場し壮大なtuttiで最高潮を迎える。
活躍度合い(≒難易度)
木管:8(fl./ob./alt.sax)
金管:8
打楽器:6
10名以下少人数バンドのための選曲
【小編成】天女の舞~能「羽衣」の物語によるラプソディ/松下倫士
小編成で演奏できる楽曲。吹奏楽コンクールだけでなくアンサンブルコンテストにも用いることができる。5分程度にまとめられており、奏者それぞれがソリストとしての技量を求められるが音楽的には非常に充実している。
活躍度合い(≒難易度)
木管:8
金管:不明
打楽器:8