2023年吹奏楽コンクール自由曲候補11選(小編成部門・団体向け)【上級・上位大会向け】〜指導者のための楽曲メモ

  • 2023年4月21日
  • 2023年6月8日
  • 吹奏楽
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昨年に続き中学生である程度活動が活発なバンド〜高校生の小編成程度を想定した吹奏楽コンクールの2023年選曲用記事です。

昨年度の記事に比べると難易度高め(小編成部門であれば東日本大会を想定する程度)の楽曲を中心に集めております。

外国作曲家の作品

巨人の肩に乗って (グレアム, P)

アメリカの吹奏楽作曲家グレアムの作品。

金管楽器中心のオープニングで、金管楽器が良く鳴るバンドにおすすめ。特にTp.とEuph.には高い技術が要求されるので、その2パートが充実していると良い。

木管楽器も連符中心に難易度が高いがSoloというよりは『Tutti』での音符が多いため、木管楽器は個人の技術よりも全体としての一体感があるとまとまりやすいと言えそう。

管楽器に比べると打楽器は比較的人数を必要としないので、打楽器が少ないというバンドにも意外とおすすめ。

活躍度合い(≒難易度)
木管:8
金管:9
打楽器:6

A Brussels Requiem (アッペルモント.B)

ベルギーの作曲家アッペルモントの作品。中低音の金管楽器を演奏する人にとっては、馴染みの深い作曲家かもしれません。

トロンボーン独奏曲「Colors(カラーズ)」や、ユーフォニアム独奏曲「グリーン・ヒル」などメロディの美しい独奏曲を作曲している作曲家。日本の吹奏楽コンクールでは、同曲が最も有名でよく演奏されている。

実際に2016年で起きたベルギーの首都ブリュッセルでのテロ事件を題材に書かれているため、楽曲へ感情移入をしやすいという点では中学生でも取り組みやすい。冒頭クラリネットのソロではじまり、トロンボーンソロや疾走感のある冒頭部を経て、中間部ではユーフォニアムやダブルリード楽器のソロが奏されるため、オーボエなどダブルリード楽器がある学校には特におすすめ。ユーフォニアムの使い方はヨーロッパの作曲家らしくブリティッシュバンドのような連符も多いので、ユーフォニアムが上手な学校にもおすすめ。

レクイエム(鎮魂歌)という題名ではあるが、【終結部】に向けて明るい曲調ももち、どことなく未来を感じさせる構造はコンクールでも聴き映えする。

活躍度合い(≒難易度)
木管:8
金管:9
打楽器:7

ルイ・ブルジョアの讃美歌による変奏曲(C.T.スミス)

アメリカの作曲家C.T.スミスの作品。一世を風靡した「フェスティバル・バリエーション」と対をなしてコンクールでよく演奏されている同作曲家らしい明るい曲調が基本となった作品。

木管楽器だけでなくユーフォニアムやチューバにも連符があるのは他の作品と比べても珍しいが、ならではのサウンド感がある。【中間部】オーボエのソロやクラリネットでのシンプルなメロディがあり、前後の困難易度かつ華やかな部分との比較が印象的。全体的に木管楽器には高い技術が要求され、トランペットを起点としたフーガを含むなど音楽的にも充実している。

難易度は高いが「生徒が楽しく取り組める」楽曲の魅力を持っているため、挑戦してみる価値のある一曲。打楽器の難易度は管楽器に比べると若干低いがシロフォンなどの鍵盤楽器中心に効果的な楽器も多いので、打楽器も有効活用したい。

活躍度合い(≒難易度)
木管:10
金管:9
打楽器:7

交響曲第1番「アークエンジェルズ」/フランコ・チェザリーニ

『青い水平線』などで有名になったスイスの作曲家チェザリーニの作品。

『交響曲』という名の通り原曲は長大な作品だが、2017年に八王子学園が演奏したことで有名になった。小編成での演奏機会は多くないが、人数がある程度充実している学校なら工夫次第で演奏できる。

同学園のカットを例にとると、Timp.に続いて管楽器による壮大なオープニングは金管楽器中心。中間部はダブルリード楽器などを中心とした木管楽器によるアンサンブル中心となる。フルートソロあり。

全体的に同作曲家の作品に多いようにHr.の活躍するパッセージも多いので、Hr.が充実した学校にもおすすめ。打楽器は技巧的というよりも一音ごとのシンフォニックな音色が要求される。

活躍度合い(≒難易度)
木管:9(ob)
金管:9
打楽器:7

トリプロ・トリプルム/高 昌帥 Triplo Triplum by Chang Su Koh

高昌帥作品。Hrに導かれて他の楽器が呼応する形でオープニング。同作曲家らしい神妙な和声感から次第に明るい雰囲気へと続く。全体的にA.リード作曲の『春の猟犬』を彷彿とさせる構成で、似たようなパッセージも多い。(本曲は明言されていないが、同作曲家の作品には『Viv as an Oak (ヴィヴ・アズ・アン・オーク)』などリード作品を意識したものが他にもある)

【後半快速部分】Picc.ソロからの木管各楽器へ橋渡しするようなSoloまわしがありますが、全体的にはA.リード作品に多いように「合奏力」「サウンド」としての魅力を伝えやすい作品です。

活躍度合い(≒難易度)
木管:8
金管:8
打楽器:6

ラム・オブ・ゴッド/デイヴィッド・ギリングハム

アメリカの吹奏楽作曲家ギリングハムの作品。

曲名はキリストの贖罪をテーマとしており、曲を通して不穏な空気感や、随所に散りばめられた不協和音が終始得体のしれない雰囲気、人智の及ばないシリアスな世界感を感じさせる。

Picc.やHr.に重要なフレーズが割り当てられており、特にPicc.はレチタティーボのような「語り」的な役割を担っているように感じる。Hr.やTp.はそれに対する啓示のような役割と感じさせる。

同作曲家の他の楽曲にもよく見られるように、この曲も打楽器が効果的に使われており、管楽器×打楽器の構図が見られる楽曲。アルトサックスにもソロあり。

活躍度合い(≒難易度)
木管:8
金管:8(Hr.)
打楽器:9

ワン・トゥルー・ライフ/デイヴィッド・ギリングハム One True Life by David Gillingham

同じくアメリカの吹奏楽作曲家ギリングハムの作品。

グレードの数字上は「4」と先ほど挙げた『Lamb of God』と比べると下がるが、楽曲の完成度でいうとさほど変わらない。

【冒頭】何かを告げるような「チャイム」の音色に続いて中低音金管群によるテーマが示される。

【中間部】から後半にかけてはゆったりと親しみやすいフレーズが使われるが、打楽器なども効果的に使われており、曲の難易度の割に演奏効果は比較的高い。

終盤に向けて静けさを整えていく構成は、まさに「人生」を表しているかのよう。

活躍度合い(≒難易度)
木管:7
金管:7
打楽器:6

パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582/J.S.バッハ

言わずと知れたJ.S.バッハの作品。

吹奏楽自体その音色が“オルガンサウンド”と比喩されることもあるように「パイプオルガン(オルガンも厳密には管に空気を入れて音を出すので)」との相性が良く、バロック作品との相性は良い。

各楽器の個の技術以上に楽譜の構成、アナリーゼを必要とする一曲だが音楽を刷る者なら一度は触れておきたい作曲家である。

活躍度合い(≒難易度)
木管:8
金管:8
打楽器:7

邦人作曲家の作品

富士山〜北斎の版画に触発されて〜/真島俊夫

2023年現在小編成の学校が取り上げる機会が増えてその人気が再燃している真島俊夫氏の作品。『3つのジャポニスム』『鳳凰が舞う』と合わせて3部作とされる。

【冒頭】富士山の裾野を感じさせるような低音群の唸りから拍子木なども効果的に交えながら拡大していく描写は聞く人を惹きつける。

【快速部】Hr.によるテーマが各楽器へと引き継がれエネルギッシュな展開を迎え、急に視界が開けたと思うとSop.Saxのソロに導かれて美しいメロディがおり重なりながら現れ、【中間部】ここでもHr.ソロによる哀愁漂うメロディーが木管楽器とアンサンブルしながら感動的な頂点を迎え、 Tuttiとなる。

全体的に“和”を彷彿とさせつつも真島作品特有のフランスらしい洒脱な和声感などが充実しており名曲と呼ばれるのも納得の一曲。

活躍度合い(≒難易度)
木管:9
金管:9
打楽器:8

「鳳凰」~仁愛鳥譜(鈴木英史)

作編曲家として吹奏楽業界で知名度が高くファンも多い鈴木英史氏の作曲作品。

和打楽器が印象的なオープニングから疾走感のある【快速部】へとつながる。【中間部】は、各楽器による旋律が美しく絡み合い、楽曲全体の構成はシンプルだが、同作曲家らしい美しいオーケストレーションは演奏効果が高いことに加え奏者の充実感も高い。

曲名の通り全体的に“和”を彷彿とさせ、途中で「掛け声」が入るなど日本民謡的なフレーズも多い。

【集結部】では、冒頭と同じ締め太鼓のリズムから疾走感を経て、Tp.ソロ→Hrの咆哮と拡大して壮大に終わる構成は圧巻。

活躍度合い(≒難易度)
木管:8
金管:8
打楽器:9

活躍度合い(≒難易度)
木管:8
金管:8
打楽器:9

瞬間(とき)は煌めいて(鈴木英史)

【前半】不穏な空気からTpのファンファーレに呼び起こされる形でHr.の咆哮、Tuttiへとつながる。開幕こそ、暗鬱とした雰囲気が漂うが、全体としては明るい未来へと向かう構成で、

我々人間は、何かしらの哀しみや苦しみを持っていますが、その哀しみや苦しみから解き放され、心からの喜びや感動を感じる瞬間(とき)が、人生の中で何回か訪れます。そして哀しみや苦しみが深い程、その瞬間は華やかに煌めくでしょう。この曲は、その煌めく瞬間(とき)への讃歌です。

という作曲家の言葉通り、ベートーヴェンなどの「苦悩から歓喜へ」という作品概念にも通ずるものがある。

サクソフォーンの美しいソロ→ホルンメロディを経由しながら漂う【中間部】を経て、再び力強い合奏へとつながり、冒頭のTpのファンファーレが現れるなど楽曲としての統一感も保たれる。

活躍度合い(≒難易度)
木管:7(fl/alt.saxsolo)
金管:7
打楽器:7(timp.solo)

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