個人事業主としての音楽家の確定申告について

確定申告。フリーランス(個人事業主)として活動していることも多い音楽家にとっては、年度末最後に訪れる重要なイベントの一つです。

しかし、ネットで検索しても出てくる記事はどれも難しそうで、練習に明け暮れ社会の仕組みから離れて大学生活を送ってしまった音楽家にとっては、

「確定申告って一体なんのこと?」

「なんの為にやるのか?」

といったごく初歩的な段階で「??」が出てきてしまいます。

実際、私自身も大学時代に、源泉徴収されて支払われた報酬があるから、「なんとなく還付金をもらえる」という理由でやってはいたものの、その実態はよくわかっていませんでした。

今回は、確定申告についてなるべくそんな音楽家の立場に立って噛み砕いて記事にしてみたいと思います。

確定申告の目的

学生でなくなってまず最初に頭を悩ませることの一つに、「税金」の支払いがあります。具体的には、

「所得税」
「住民税」
「健康保険税」

の3つ。フリーランス(個人事業主)として独立してまもない音楽家にとってこういった支払いは決して楽なことではないと思います。そう。「確定申告」は、

この「税金」の金額を決めるため

に必要なことなのです。

なので、しっかりとやっておかないと「無駄に税金を納めてしまっている」ことになったりして、結局は

自分が損をします。

なので、お金の管理が苦手な人も多いフリーランスの音楽家も、自分のために必ず確定申告をしましょう。そして、仕組みを理解していれば無駄に損をしてしまうことも避けられます。

確定申告のメリット

先述の通り、確定申告の一番の目的は「自分の所得を明確にし税金の金額が決まる」ことです。初めての方には大変なイメージもある確定申告ですが、しっかり行うことで受けられるメリットがあります。

それが「源泉徴収額が戻ってくる」「年収の証明ができる」「赤字を繰り越せる」の3つ。それぞれについて詳しく見てみましょう。

源泉徴収額が戻ってくる

フリーランスの音楽家をやっていると、仕事の報酬として「源泉徴収」されたお金をいただく場合があります。

1月〜2月にかけて届く「支払調書」がそれを表しています。

この支払調書の一番右にある部分が「源泉徴収」に当たるわけですが、源泉徴収というのは、

「支払う側」が「もらう人(=私たち)」が払うことになる税金(所得税)を先に支払っておきますよ。

という仕組みです。報酬を支払う時に「このくらいの報酬を受け取る人ならこのくらいの所得税を支払うことになるはず」と先に国に納めてくれているのです。

しかし、最終的に収入が少ない人の場合は、その源泉徴収で引かれた金額が、実は「払い過ぎだった」ということがあるのです。

「確定申告」をすることで、その払い過ぎた源泉徴収額分を年度末に国から返してもらうことができるのです。(=還付金)

「年収」の証明ができる

フリーランス(個人事業主)は、会社員と比べると、どうしても社会的に信用されづらいものです。社会的な信用はその人の「年収」で決まる部分が少なからずあります。そんなとき、

「私はこれだけの収入(=信用)がありますよ」

ということを証明するには、

・サラリーマン(社会人)…「源泉徴収票」
・フリーランスの音楽家(個人事業主)…「所得証明書」

がもっともポピュラーな書類になります。そして、フリーランスが収入を証明するための「所得証明書」を発行してもらうのに必要なのが「確定申告」です。

もし仮に確定申告をしないと「収入が0の人=社会的に信用が0の人」ということになってしまいます。

「赤字」をくりこせる

フリーランスの音楽家として活動していると、

自分が年間に稼いだお金<(稼ぐために)一年間に使った金額

となってしまうことも少なくありません。音楽のように見えないものを扱っていると、どうしてもわかりづらいのですが、もし八百屋であれば、(少し強引ですが…)

売り上げたお金<仕入れに使ったお金

ということになります。八百屋で言えばこれすなわち「赤字」となるわけですが、「確定申告」を行うと、この「赤字」を翌年に繰り越すことができます。

要するに、来年以降「黒字」になった時に、

今年は黒字だけど、去年これだけ赤字だったからその分税金を安くしますね。

と国に判断してもらえ、「赤字」だった期間分を考慮してその年の税金を減らしてもらうことができるのです。(=相殺)

(注)「赤字」をくりこすことができるのは「白色」と「青色」2種類ある確定申告のうちの「青色申告」の場合に限られています。

「赤字」をくりこせる

さて、ここまで確定申告のメリットをご紹介してきましたが、実際に行う確定申告には「青色」と「白色」の二種類があります。

フリーランス(個人事業主)の場合、「青色申告」が絶対にお得です。

ただ、この青色申告を行うためには原則前年度(2021年に青色申告したい人は2020年)の3月15日までに「来年度は青色申告をしますよ」という申請が必要なので、今年すぐにということは難しいかもしれません。

それでも間違いなく「青色申告」の方がお得な点が多いので、まだ申請されていない方はぜひ申請されると良いと思います。(=青色申告承認申請書)

ちなみにこの申請は所轄の税務署に行ってA4の紙一枚書いて提出するだけなのでとても簡単です。

私がこの申請書を書く時に参考にさせていただいた記事はこちら。

(参考記事)所得税の青色申告承認申請書 書き方と記入例

「青色申告」のすすめ

先程、確定申告に関して青色申告が「お得」という言葉を使いましたが、そもそもお得って何なのか。私も最初ただの申告になぜ「お得」とか「お得じゃない」かがあるのかがよく分かりませんでした。

これを理解するには、少しだけ確定申告の仕組みを知っておくと良いと思います。

そもそも確定申告において「お得」って?

確定申告は、

自分にこれだけの「所得」がありますよ

ということを国に申告するために行う作業で、国はその人の「所得」に応じて

あなたはこれだけ税金を払ってくださいね

と税金の金額を決めます。ここでそもそも「所得」ってなに?という話になるのですが、

「所得」=「収入」ではありません

これが、確定申告においても、とても重要な考え方です。大切なことなのでもう一度。

「所得」=「収入」ではありません

では「所得」と「収入」はいったい何が違うのか。ざっくり言うと、

収入…その人が一年間でもらったお金すべて。売り上げ。
所得…「収入」から、それを得るために必要だったお金(=経費)を引いて残ったお金。  

ということになります。要するに、その仕事をして最終的に

「手元に残ったお金」=「所得」

と思ってもらうとわかりやすいかと思います。

これがもし仮に、「収入」だけで税金が決められてしまうと…

「800万円の収入があったが、300万円の経費がかかって手元に残ったお金(=所得)は500万円」のAさん

「1,000万円の収入があったが、800万円の経費がかかって手元に残ったお金(=所得)は200万円」のBさん

では、Bさんの方が手元に残ったお金は少ないにも関わらず、結果的にたくさんの税金を払うことになってしまい、生活が大変になってしまいます。

「所得」に応じて税金を決定することで、みんなが不公平にならないようにしているということになります。

「所得」を申請するのが確定申告

要するに確定申告に関して「お得」というのは、

①税金は「所得」に応じて決まる
②「所得」が低い方が払う税金が安くなる
=「収入」が多くても、そこから色々なものを引いて残る「所得」が低ければ、払う税金は安くなり結果「お得」になる。

ということになります。(もちろん違法行為を薦めているわけではありません。あくまで正直に申告することが前提のの話です。)

では、この「収入」から引くことのできるものとは一体何なのか。

それが「経費」になります。

経費…その収入を得るためにかけたお金(仕入れ金など)

また、所得税を決める確定申告においては「収入」から経費以外にもう一つ差し引いてもらえるものがあります。それが「控除」になります。

控除…人それぞれ様々な条件に応じて「収入」から差し引いてもらえるお金

です。「控除」にはさまざまな種類がありますが、

・結婚相手を養っている(=配偶者控除)
・子どもを養っている(=扶養控除)
・「国民健康保険」料を支払っている(=社会保険料控除)

など、その人その人の境遇に応じて、全部で14種類もの控除があります。これも税金を払う上で不平等がないように考えられた仕組みです。要するに、

収入がたくさんあっても、その収入を得るためにたくさんのお金を使っていて(=経費)、そのお金で子供を養わないといけない(=控除)人は

最終的に手元に残るお金(=課税所得)も少なくなるので、その分税金が安くなるようにしてくれているのです。

要するに、確定申告を「お得」に行うということは、

「税金を安くする」ことが必要で、そのために
「所得を低く」したい。そして、
「所得を低く」するためには、
「経費と控除」を理解ししっかりと「収入」から差し引いてもらう

こと、すなわち

「経費と控除」についてしっかりと知っておくこと

が、とても大切ということになります。

確定申告における「お得」とは

「領収書いりますか?」

多くの人が、外食などをした際に、このやりとりをしたことがあると思います。これがいわゆる「経費」のために必要な作業なのです。

その仕事をするために必要だったお金は基本的にはどんなものでも「経費」にできるますが、それを証明するためには、

・領収書
・出金伝票

のどちらかが必要になります。「領収書」はお会計の際にレジでもらうもので、「出金伝票」は、結婚式の祝い金など領収書を発行してもらえない場合に自分で記入しておく伝票のことです。

また、自宅を事務所として使っている場合には、光熱費や家賃は全額ではなく、そのうち事務所としてつかった割合(%)をかけて「経費」にすることができます。(=按分)

「経費」について

「経費」はその収入を得るために必要だったお金なので、みんな普段からなんとなく意識しています。しかし「控除」は、普段あまり意識することがない上に自分が知っていて申告しないと引いてもらえないので、自分自身で把握しておく必要があります。

「控除」については自分が当てはまるものは全て適用してもらうことが大切です。

「控除」には全部で14種類あるのですが、例えばその中でも誰でも引いてもらえるもの。それが「基礎控除」と呼ばれ、

誰でも38万円を収入から引いてあげます

ということになっています。どんな生活であっても1年間に38万円くらいは必要ということで国がそれを控除してくれるわけです

そして、これが「青色申告」の場合はさらに65万円の控除を受けることができることになっているのです。

(注)65万円の控除を受けるためには、「複式簿記」という方法で記帳する必要があります。それより簡単な「簡易簿記」の場合でも10万円の控除を受けることができます。

要するに、個人事業主でお金の管理をちゃんとしていた人には65万円差し引いてあげますよ。ということ。65万円の控除と言ってもピンとこないかもしれませんが、

毎年国がその人に65万円をくれる

と言い換えると、とても大きなことに思えますね。

「控除」について

上記のように65万円の控除以外にも青色申告ならではのメリットがいくつかあります。

青色申告のメリット

青色申告をして、複式簿記で記帳していればそれだけで毎年65万円の控除を受けることができます。

「複式簿記」と聞くと少し難しそうに聞こえますが、これは会計ソフトを使えば意外と簡単にできるようです。

有料の場合でも会計ソフトを使えば、年間1万円未満の出費で、65万円の「控除」を受けることができますし下記のような「マネーフォワードクラウド」には無料で使える「フリープラン」もあります。

実際に私もこちらのソフトを無料で使っていますが、フリーランスの音楽家であればこちらのプランでほとんどの方が賄えると思います。

65万円の「控除」をうけることができる

先述の、確定申告のメリット「赤字をくりこせる」にも書きましたが、青色申告をすることで、「赤字」を来年度以降にくりこすことができます。

その年が赤字の場合、翌年以降「黒字」になっても国に「赤字」期間のことを考慮して税金を安くしてもらえます。

「赤字」をくりこすことができる

これもフリーランスのような個人事業主には有り難い仕組みですが、自分の家族を従業員として雇うことができます。(=青色事業専従者)

そして、雇った家族に支払ったお給料は「全額経費」にすることができます。つまり、

・事業を自分の妻に手伝ってもらっている。
・その年の売り上げ(=収入)は500万円。
・妻に240万円(=20万円×12か月)給与として払った。

場合だと「所得」は260万円(=500万円-240万円)になり、個人事業としての「所得」をぐっと抑えることができるのです。

家族に支払った給与を全額「必要経費」にできる

「経費」は原則10万円未満のものしか認められません。

しかし、フリーランスの音楽家が、楽器などの大きな買い物をすると、それは当然仕事に必要なものなので「経費」にしたくなります。

もちろんこれも「経費」にはできるのですが、楽器は何年も使うものなので、何年かに分けて少しずつ経費にしてくださいね。という仕組みに当てはめることになります。(=減価償却)

白色申告の場合、例外なく大きな買い物はこの仕組みの対象となってしまうのですが、青色申告の場合だと、

・30万円未満
・年間に300万円まで

であれば、その年の経費にもしていいよ。ということになっています。(もちろん通常通り減価償却することも可。)

これも白色申告には認められていないため青色申告のメリットと言えます。

このようにフリーランス(個人事業主)として活動する音楽家には青色申告で確定申告することのメリットが非常に大きいことがおわかりいただけるかと思います。

大きな買い物も「経費」にできる

今回はフリーランス(個人事業主)として活動する音楽家にとって重要な「確定申告」について記事にさせていただきました。

私自身、大学時代は特に意識していませんでしたが、卒業してみると「確定申告」の重要さとそれに対しての自分の知識のなさを痛感したのでそんな音楽家の皆さんの参考になればと思い今回の記事を書きました。

大学に数ある学部の中でも「音楽」という分野はその後もフリーランス(個人事業主)として活動する人が多く、自分で「確定申告」をしなければならない人も圧倒的に多いと思います。

その一方で、在学中は練習に明け暮れる毎日で「確定申告」について勉強する機会なんてなく、卒業してから突然の出来事に困ってしまいます。

この記事が、私と同じように「確定申告」に困った人にとって少しでも役に立つと同時に、多くのフリーランスの音楽家をはじめとする個人事業主の方々が損をすることがなくなればとても嬉しく思います。

まとめ

さいごに、この大変な確定申告を少しでも楽にするために使えそうなサービスを自分が利用しているものも含めてご紹介しておきます。

確定申告自体は、2月から3月に行いますがその準備として一年を通してきちんとお金の管理をしておくことが必要です。

もちろんある程度の事業規模になれば「税理士」に依頼するのが良いと思いますが、個人の音楽家のようにそこまでの規模でない場合「クラウド会計ソフト」と呼ばれる便利なソフトを使って自分で管理することもできるようになりました。

確定申告を少しでも楽にするために

クラウド型会計ソフトは大手が3社(「freee」「弥生」「マネーフォワード」)があるようです。今回はその中から、クラウド会計ソフト「マネーフォワード」 をご紹介しておきます。

個人的に3社を調べてみてこちらのクラウド会計ソフト「マネーフォワード」 がいいと思った理由は、

・無料のフリープランでも個人の音楽家なら十分
・有料版も他に比べて費用が安い(年間8,800円+税)
・自分もある程度会計知識をつけながら使うことができる
・個人事業主でも法人化しても使いやすい

という点です。もし興味のある方は検討してみてください。

クラウド型会計ソフト「マネーフォワード」

こちらは「税理士」を紹介してくれるサイト「税理士ドットコム」です。確定申告の場合、相場がだいたい3万円〜なようですので、ある程度事業が大きくなっている方は、依頼された方が結果的に節税面などで「お得」になるかもしれません。

もちろん先ほどのクラウド会計ソフト「マネーフォワード」と併せて使うのも良いと思います。

税理士ドットコム

この記事はあくまでも「素人目線で確定申告について書いた」記事です。そのため、専門家の方から見ると間違いなどもあるかもしれませんので、その点は予めご了承ください。

そして、今この記事をお読みいただいている皆様にも最終的には税務署の無料相談窓口などを活用して、自分が納得することを強くお勧めします。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

記事の内容に関して何か間違いにお気付きの場合はぜひコメントなどでご指摘いただけますと幸いです。

関連記事

2018年10月から始まったフリーランス(個人事業主)のための収納代行サービスと即日払いサービス「FREENANCE フリーナンス」。 業界的にもフリーランスで活動する人も多い音楽業界。 今回ふとこちらのサービスを見つけたので[…]

最新情報をチェックしよう!