【映画】『風に立つライオン』はなぜ素晴らしいのか

『風に立つライオン』を見てきた。

 

 

実は、映画を見るまでこの作品ができるまでの経緯については
まったく知らなかったのだが、一映画作品として

面白かった。

印象に残った部分について少し書き残しておきたい。

医師である航一郎は海外赴任を機に、
内戦の続くケニアの赤十字病院で働くことを決意する。

その病院の主な仕事は、患部の切断と消毒だった。

そしてそこには兵士として戦場に送られたり、地雷探しの駒として使われた、
少年達も運び込まれてくる。 

その中にンドゥングという少年がいた。

彼も家族を殺され、麻薬によって兵士として利用された子供の一人だった。

足に負った傷が癒えても尚、彼の心の傷は深かった。

しかし航一郎との関わり合いの中で、
彼は次第に自分の未来と向き合うことができるようになっていく…。

この映画についての感想を二つほど挙げておきたい。

1、俳優陣の演技と現地の少年の演技

航一郎を演じる大沢たかおは、
スクリーンに誠実さを滲ませたかのような実直で素晴らしい演技だった。

また、現地赴任した看護師役の石原さとみも、
印象に残るシーンを数多く演出していた。

しかし、何といっても驚きなのは、映画に出てくるアフリカの人々が現地の素人ということだ。
自然体の演技が逆に映画としての味を出しているのかもしれない。

特にンドゥング役を演じた現地の少年(ERICK OJIAMBOH)の演技は俳優陣に匹敵するくらい秀逸なものだった。

2、写真のようなカット

ひとつずつの場面が写真のように鮮明で、現実を切り取ったようなリアリティをもって描き出されていた。

映画を見終わって一夜あけた今日になっても、その場面の多くを鮮明に思い返すことができる。

動画を見たというよりは、何百枚もの写真を見たようなそんな印象がある。

ところで、冒頭でも少し触れたが、この映画にはモデルが存在している。

航一郎というのは、柴田紘一郎という実在する医師が元になっており、
彼は幼い頃に読んだシュバイツァー(1875~1965年)の伝記に影響されて医師を志した。

そんな彼の人生に感銘を受けて、
友であるさだまさしはそのエピソードを「風に立つライオン」という曲にした。(1987年)

そして、その曲に感銘を受けた主演の大沢たかおが小説化を熱望し、
最終的に今回の映画化に至った。(2015年)

こうしてまとめてみると、

一人の偉人が、一人の医者を生み、
その医者が、ひとつの曲を生み、
さらにその曲が、ひとつの映画を生む。

というもうひとつの人間的な物語が、この映画には含まれていることに気づく。
シュバイツァーの生まれた年から映画化までちょうど130年である。

この『風に立つライオン』という映画は、
ストーリーとしての面白さに加えて、
この映画にまつわる一連のドラマ(経緯)も、
作品の完成度に大きく影響している。

~随想~

人間はいろいろなところでつながっていく。
知らない間に人に影響を与えている。

そして、他者に影響を与えるようなエネルギーをもつ人間というのは、
ぶれることのない真っ直ぐな人間である。

しかし、多くの場合、本人は自分の信念を貫いているだけなのである。 

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