“音痴”は存在するのか

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高校生の歌のテストをした時の話。

テストが終わった後に、とある男子生徒が話してくれた。

彼は、中学校2年生の時の歌のテストで、当時の音楽の先生に
「あなたは声量も、やる気もAだけと音程がCだよ」 
と言われたらしい。

そして、中学校3年生の時のテストでは、一回目のテストで合格できず、再テストの後に、
「あなたはこの(高い)音の時に(別の低い)音を歌っている」 
と、ピアノで音を弾きながら言われたらしい。

けれど、その生徒は今回のテストで決して変な音程では歌っていなかった。

 
確かに今年の最初の頃は、違う音程で歌っていることもあったのだが、
数回一緒に音をとったり、
声の出し方をほんの少しアドバイスしたり、 
一緒に歌っていくうちに、今ではすっかり正しい音程で歌えるようになった。

学校で多くの生徒と関わると、
確かに“音をうまく取れずに音痴だと呼ばれている”生徒もいるにはいるので、
今回はそのことについて少し考えてみたいと思う。
(ここからは、あくまで一個人の見解なので、それを踏まえた上で読んでいただければと思う。)

まず、いきなりだが、

“音痴”は、存在しない。

大人の場合は矯正が難しいという問題点はあるが、
小・中・高校生の時に“音痴だ”と周りから言われている人は、

ほぼ例外なく、
ある時誰かに「君は“音痴”だね。 」と言われたことによって“自分は音痴だ”と思い込んでいるだけなのである。

歌というのは不思議なもので『自分は上手い』と思って歌っているほうが上達しやすい。
逆に、『自分は音痴(かもしれないん)だ』と思い込んでいればどんどん音程が取れなくなる 。

だから、あるとき友達や先生に君は音痴だと言われたことによって“音痴”になってしまったのである。

これは、ケガの時に、見えないうちは我慢できる痛みだったのが、
傷口を見た瞬間痛く感じ始めることと似ている。
“音痴” だと定義づけられてしまうことが音痴になる一番の原因なのである。

そして具体的にこの『音痴(と呼ばれてしまう人)のパターン』、を考えてみると、
少し音楽的な『音程』の話になるが、、
その生徒の歌は、同じ音程では歌えていなくても
4度や5度、3度や6度という風に、協和音程ハモりの音程で歌っていることがほとんどである。

短2度というおぞましい音程で歌い続けられる生徒にはまだ出会ったことがない。

このことについて、
自分が管楽器という倍音を扱う楽器を演奏するので思うことかもしれないが、

(ピアノと同じ音程で歌えない理由は)
①完全1度の音程ではなくて、そこの音に含まれている倍音のどれかを拾っている

もしくは、

②耳で聞いた音を歌(声)にした際に一定の度数ずれる。

かのどちらかだと思う。

では、音楽教師はどうあるべきなのか。

先程の男子生徒の例で考えるならば、

「あ、この生徒は上手く音程が取れていない」
と判断したのなら、その現実を本人に言うだけでは何の意味もない。
むしろ、前述のとおり音痴をつくってしまうのだから、逆効果ですらある。

同じ状況を算数学で考えるなら、
解答にバツだけをつけて解説や解き方は一切教えないのだから、
教師として何の役にも立っていないことがわかる。

もし、音程が外れていることがわかってもそれを指導できないのであれば、
それは指摘するべきではない。

その指摘だけでは、『百害あって一利なし』である。 

ここからは実際にそういう生徒がいたときの対応の方法だが、
自分の場合は、

①褒める

例えば、音程が取れないのは倍音を拾っているからだと考えれば、
その生徒は誰とでも『ハモることができる』というすばらしい能力を持っているのだから、
それはすごいのだと褒める。

それでなくても、とにかくその生徒の歌のいいところを探して褒める。
一生懸命『上手になりたい!』と思って個人指導に応じてくれているような生徒なら、
良い子に違いないので、褒めることは何も難しくない。

②ハミングで歌う 

音程の取れない場合はハミングでも音が取れていない。
一生懸命歌詞を歌おうとすると本来の音程を言葉によって見失ってしまうので、
ハミングでひとつの音だけでも正確に取る練習は、非常に有効である。

③本人の歌声がどれなのかを聞き分ける。

これは、男子生徒に多いが、高い音を聞いて低い音で歌ってしまう時というのは、
自分の声を知らない場合である。
上手く響かせた歌声を知らない(=地声で歌ってしまう)ことに原因がある場合、
ほんの少し響きのコツをつかんでしまえば、すぐに音程が取れるようになる。

そのために、(これは女子生徒にも有効だが、)その感覚をつかませるために
わざと全部裏声で歌ってみることはすごく効果的である。 

音楽教師が、音程が合ってないとわかったのなら、
・高くするのか
・低くするのか
・響きのつけ方を変えるのか

というように具体的なアドバイスと、それにたどり着く練習を行うべきだろうと思う。

最後になったが、
“声楽家” と呼ばれる人達には、

自分のことが好きだ!

と思っている人が少なくない。

考えてみれば、オペラで何千人相手に体一つで音楽を伝えなければならないのだから、
自分に自信を持つことは、必要条件である。

歌のプロがそうして自分の能力を高めているのに、
素人が「自分は下手くそなんだ」と思っていたら、上手くなるはずないと思うのである。 
 

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