クラシック音楽に関わる仕事一覧

音楽が好きで音楽大学に進んだのはいいけれど、卒業を間近にして自分の今後が見えないという人も意外と多いのではないでしょうか?

今回は、そんな音楽大学卒業後の進路についての参考になればと思い、「クラシック音楽に関わる仕事」についてまとめてみたいと思います。

みなさんの進路決定に、少しでも役立てば幸いです。

演奏に関わる仕事

クラシック音楽が好きな人なら、おそらく誰もが一度はめざし憧れるであろう演奏者としての仕事です。

ソリスト

文字通り、ソロ(独奏)で生計を立てる人。協奏曲のソリストや、第九のソリストなどです。

音楽を志す人の中でも、ソロだけで食べていけるようになるというのは至難の業で、実際にそれができるのは、ごく一握りの人です。ピアニストや歌手など、元々ソリスティックな専攻の場合は、特に大変でしょう。

しかしその分、自分の音楽をお客さんに届けられるので、アーティストとして、これ以上の幸せはないとも言えるでしょう。

必要とされる力

・大きなコンクールでの入賞歴

・アーティストとしての圧倒的な世界観

オーケストラなどプロ団体のプレーヤー

ソリストの次に狭き門ともいえるのが、「プロ団体」のプレーヤーです。

弦楽器の場合はオーケストラ、管楽器や打楽器の場合はオーケストラや吹奏楽、声楽の場合は二期会などのオペラ団体、というようにそこに所属することができれば毎月給料をもらうことができる職業です。

いわゆる世間的な「会社員」の立場になるため、一度入ることができれば安定しているのは、ソリストにはないこの職業の魅力といえます。

必要な力

・入団試験に合格できる能力

・その団体から見て魅力のある人間性・社会性

指揮者

バーンスタイン、小沢征爾など、オーケストラを指揮する職業です。

プロのオーケストラとともに音楽を奏でることは、演奏家とはまた違った魅力に溢れている仕事でしょう。音楽大学などの指揮科に進むことも方法の一つですが、著名な指揮者の多くが幼少期から指揮者になることを夢見て目指す場合が多いように思います。

必要とされる力

・スコアリーディング能力

・指揮の技術

・ピアノの技術

・統率力

・カリスマ性

自衛隊の音楽隊

こちらも演奏を生業(なりわい)にしてお給料をもらえる仕事。自衛隊の場合は国の「公務員」になるのでこちらも安定という面では魅力の大きい職業です。

入隊すると約3か月の訓練がありますが、被災地などへの慰問演奏など自衛隊独自の内容もあるため、地域の人々に音楽を間近で届けられるという魅力もあります。その一方で、公務員のため私的な演奏会を開いたさいにはお金をもらうことができないという注意点もあります。

必要とされる力

・入隊試験に合格できる演奏能力

・健康的な身体とある程度の体力

・マーチング能力

警察、消防の音楽隊

こちらは警察や消防が持っている音楽隊です。都道府県により異なるようですが、ほかの交番勤務など業務と兼ねて勤務することになる場合と、演奏活動と訓練だけを行う場合があるようです。

地域によって音楽隊があったりなかったりするといった「地域性」も強いため、自分が希望する地域に隊があるかどうかなど、下調べを行う必要があります。

必要とされる力

・入隊試験に合格できる演奏能力

・健康的な身体とある程度の体力

・マーチング能力

創り出す仕事

表立って演奏することは少ないけれど、音楽史に歴史を残す事のできる意義深い仕事です。

作曲家/編曲家

人前に何かを発表するという点、比較的演奏家に近い立ち位置かもしれません。

クラシック音楽がある程度「完成形」を迎えているため、バッハやベートーヴェンのように…というのはなかなか難しいかもしれませんが、それでも演奏家からの依頼や、業者からの依頼も一定数あるため、人気が出れば生計を立てていくことができます。

また、良い作品を残すことができれば、半永久的に演奏されると同時に、仕事としても「印税」としての収入が継続的に生まれるという点は、演奏家と大きく異なる魅力と言えるでしょう。

必要とされる力

・作曲/編曲能力

・演奏家や業者との交渉能力(セルフマネジメント能力)

プログラムノートの執筆(楽理)

作曲家の人が兼ねている場合も多いですが、音楽に関して何かを研究し、それを世間に送り出していくという「研究色」の強い職業です。

あまり認知されていない職業のため、仕事量などで不安はありますが、クラシック音楽が発展していくために、必要な職業であることは間違いありません。

必要とされる

・学力

・幅広い分野に対する知識

・文章力

レコーディングエンジニア(録音技師)

録音を専門とする職業です。コンサートなどに機材を持ち込んで音を録り、それを持ち帰ってミキシング(編集)を行いCDなどにしていく仕事です。

日本ではあまり認知度の高い職業ではありませんが、クラシックの本場ドイツでは「Tonmeister」と呼ばれる専門職で、オーケストラの録音に立ち会った際には、「○○小節目弦楽器ズレている、○○小節目ホルン音程高い」などなど、指揮者のように問題点を指摘する地位の高い職業でもああるようです。

必要とされる力

・録音技術、機材

・ミキシング(編集)技術

・聴く力

楽器に関する仕事

音楽を奏でるために必要不可欠な「楽器」をメンテナンスする職業です。

調律師

ピアノのチューニング(調律)を行う専門職です。演奏会の前などにそのホールに訪れてホールのピアノを調律します。

音程を合わせるだけでなく、音程のズレによって生じる音色を決める仕事でもあるため、ピアニストによっては専属の調律師を抱えているほど、一人一人の個性が現れる仕事でもあります。

専門の学校で専門の勉強をして調律師になるというのが、一般的な流れのようです。

必要とされる力

・調律の技術

・ソルフェージュ力(聴く力)

リペアマン(修理技師)

楽器の調整や修理を行う職業です。

楽器店などに勤務して管楽器や打楽器などそれぞれの楽器を担当して調整・修理を行います。壊れた楽器を修理する以外にも、海外から輸入した楽器を販売前に検品したりします。

リペアの技術次第で楽器のコンディションは大きく左右されるため、素晴らしいアーティストの楽器を陰から支える大切な仕事です。

専門学校で必要な技術を身に着け、楽器店などに就職するのが一般的な流れのようです。

必要とされる力

・リペア技術

・楽器に対する知識

楽器店の販売員

ヤマハや山野楽器など各楽器店の店舗で勤務する職業です。

店舗販売のほか学校などを回って営業販売を行うこともあります。大好きな楽器に囲まれて仕事ができるため、人と接することが好きな人には非常に向いている職業といえます。

必要とされる力

・社会人としての常識

・コミュニケーション能力

・事務能力

演奏会に関する仕事

音楽を奏でる場所=演奏会を支える仕事です。

ホールスタッフ

サントリーホールやすみだトリフォニーなどの大きなホールから、ムジカーザや紀尾井町サロンホールなどの小ホールにまで様々なホールの職員として働く仕事です。

大きなホールの場合、事務・舞台といったそれぞれの担当がありますが、小さいホールの場合はそれら全てを任されることも多くあります。

必要とされる力

・社会人としての常識

・事務、舞台設営、音響、照明などそれぞれの能力

レセプショニスト

演奏会でお客様をお迎えする職業です。

受付でチケットのもぎりを行ったり、遅れてきたお客様を席までご案内したりと、演奏会に来たお客様がコンサートを楽しめるためにお手伝いする仕事です。一般的には女性のレセプショニストが多いですが、ホールによっては男性にしかできない業務内容もあるため男性も一定数必要とされているようです。

バイトでも募集しているため、レセプショニストを専門に行っている会社に応募してバイトからはじめて最終的にそちらに就職するという流れもあるようです。

必要とされる力

・接客能力

指導に関する仕事

ピアノ講師やレッスンプロなど楽器によって形態は異なりますが、音楽の楽しさを「教える」ことを通して伝える仕事です。

ピアノ講師

おそらく「音楽系の習い事」と言えばその筆頭は「ピアノ」でしょう。ピアノを教えることで生計を立てる職業です。

個人の自宅などで教室を開くほか、ヤマハや山野楽器など音楽教室には必ずといって良いほどピアノ講師の募集があります。そういったものに応募してみるのも一つの選択肢ですね。

個人で教室を開く場合には自分で生徒さんを集めなければならないため、インターネットでHPを作ったりチラシをデザインしたりといった能力も必要になってきます。

必要とされる力

・指導力

・社会性と安心できる人柄

・(個人の場合)営業のスキル

レッスンプロ

ピアノ以外の楽器(弦楽器や管楽器など)を指導することで生計を立てる仕事です。

演奏技術とは別のスキルを要求されることも多い「指導」に重きを置いて、指導力を高めることで学校にある部活動や、アマチュアの合唱やオーケストラなどの指導を専門的に行います。

必要とされる力

・指導力

・事務能力

音楽の先生

公立や私立の学校(小学校、中学校、高校)で音楽の授業を教える「先生」業です。

公立の場合は教員採用試験を受ける必要がありますが、私立の場合は学校ごとに出している応募を見てそこに直接応募するという形になります。

私学の教員募集はこちらのサイトなどでも更新されていますので、教員に興味のある方はこまめにのぞいてみると良いでしょう。

一般財団法人 日本私学教育研究所
http://www.shigaku.or.jp/employ/recruit.html

必要とされる力

・採用試験程度の学力

・ピアノの技術(伴奏程度)

・指導能力

・事務能力

その他の仕事

楽譜店の販売

文京区にあるアカデミア・ミュージックなど楽譜を専門に扱う楽譜店での仕事です。

輸入楽譜を扱っていることも多いため英語が話せると良いでしょう。また、近年はインターネット販売の楽譜もあるため、そういった企業のスタッフという道もあります。

必要とされる力

・音楽に関する幅広い知識

・言語能力

・事務能力

舞台監督

オペラなどの全体像を把握して、稽古などがスムーズに進んでいくようにまとめていく職業です。

専門の学校などもないため、少しずつ実績を積むなどして最終的に舞台監督になるという人が多いようです。

必要とされる力

・マネージメント能力

・コミュニケーション能力

ステージマネージャー

オペラでは舞台監督が仕切るのに対して、オーケストラなどを取り仕切るのがステージマネージャーです。

楽器編成に合わせたセッティング表を書いたり、スケジュールを管理したり、当日の開演を管理したりと、コンサートの全般に関わる職業です。

大きなオーケストラなどには必ずステージマネージャーがいるので、そういった法人に就職するのが一番の近道と言えそうです。

必要とされる力

・統率力

・マネージメント能力

・事務能力

ステージマネージャーは小さい公演でも必要となる場合があります。
参考までにこちらの記事もご覧ください。

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文化財団スタッフ

サントリーホールなどの民営の財団から、各地方自治体の文化財団などのスタッフです。

文化活動を企画・運営して地域に貢献していけるという点でもとてもやりがいのある職業です。専任のほか、非常勤講師やバイトの募集もしているため、自分のやりたい形態に合わせて探してみると良いかもしれません。

興味のある人は、下記のようなサイトを定期的に見てみると良いかもしれません。

財団法人 地域創造 公共ホール等求人情報
http://www.jafra.or.jp/jinzai/kyujin/

必要とされる力

・一般教養

・パソコン(エクセル・ワード)能力

・事務処理能力

まとめ

いかがでしたでしょうか。音楽にまつわる仕事と一口に言っても本当にたくさんの種類があります。もちろん自分のやりたい道に進めるのが一番ですが、そうでない仕事に就いてもその仕事で才能を発揮した人も多くいらっしゃるので、長い目で見て「自分に合った仕事」を見つけられると良いですね。

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