吹奏楽部に外部講師を呼んだ際の“謝礼”の適正金額を考える

仕事柄、吹奏楽部のパート指導や合奏指導に行かせて頂くことも多いのですが、その際に問題に上がりやすい「謝礼」に関して今回は記事にしてみたいと思います。

講師側からすれば、「いくらもらえば良いのか」

学校側からすれば、「いくら渡すのか」

双方の立場から、そんな悩みを解決するのに、少しでも役立つ記事になれば幸いです。

外部指導の謝礼を考える際に考えるべき要素

一口に外部指導を学校に呼ぶといっても、「だれを」「どこに」「いつ」「どのくらい」呼ぶのかといったそれぞれの要素を考える必要が出てきます。

考慮する要素としては、

(基本編)
・時給
・教員の給料
・交通費
・移動時間
・シーズンや頻度
・パート指導と合奏指導(指揮)の違い

(プラスα編)
・外部講師の立場や実績
・指導力

などが考えられると思いますので、それぞれについて順を追って書いていきたいと思います。

*細かな相場については都心なのか地方なのかでも変動するかと思いますので、それぞれ該当する地域に当てはめて考えてみてください。

時給

まずは最もベーシックとなる「時給」の考え方です。外部講師というと、ある種「派遣」のような体系で指導を行うことになるので、

時給のベースは「専門職の派遣」程度が相場だと思われます。

吹奏楽の外部講師は、国家資格などといった資格ではないですが、「音楽」という特殊なスキルを伝え、それは誰にでもできるものではない、という点から考えると一般的なバイトではなく、「専門職の派遣」という考え方が妥当ではないでしょうか。

例えば参考までに専門職のひとつ「看護師」を例にとってみると、このような金額だそうです。

 東京大阪岐阜全国平均
看護師1,800円1,650円1,390円1,520円
     

引用元:看護師求人EX「パートの看護師の時給」

2018年現在、全国の平均時給が「1,010円」(引用元:タウンワーク)ですので、「専門職の派遣の相場」は、1,520円=平均時給+500円ということになります。

教員の時給

続いては、外部指導を呼ぶ側=教員の時給を考えてみたいと思います。やはり、外部講師は顧問の先生の手の届かないところを指導するという点を考えると、謝礼を考える際に「教員の時給」も一つの指標になると思います。

中学校の場合、平均年収が544万円(引用元:平均年収.jp)ということなので、週休2日/1日8時間勤務で考えると、単純な時給は

544万円÷2080時間=2,615円

ということになります。

(実際は、夏休みなどの長期休暇分のマイナスや、残業のプラスの勤務時間があります。)

また、教員の派遣である非常勤講師の雇用を見ても、

1コマ(約60分)につき2,500円くらいが相場という印象です。

(実際は授業以外の授業準備時間があるため、実際の時給はもっと低くなります)

以上のことから、教員の時給は

正規採用:2,615円

非常勤採用:2,500円

程度が相場だろうと思われます。

先ほどの「専門職の派遣」の全国平均が1,520円でしたので、(それに“顧問の先生の手の届かない指導を行う”という点を考慮し)、「教員の時給」2,500円との平均を取った、

2,000円

という金額が、吹奏楽部の外部講師の時給の一つの目安になるかと思います。

交通費

外部指導として指導に行く際には必ず「交通費」がかかっています。

そのため発生する「謝礼」の多くは、暗黙のうちに「交通費込み」です。

意外と忘れがちな交通費ですが、往復で約1,000円くらいはかかりますので、これも考慮したい点のひとつです。

移動時間

これも意外と忘れられがちな部分ですが、よほど近くにある学校でない限り、外部講師は往復1時間〜2時間程度の「移動時間」がかかります。

当然、その間は何もすることができないということを考えると、この移動時間も考慮しておきたい点です。

例えば、放課後の指導で外部講師を呼ぶ場合は、

指導時間2時間+往復1時間30分=3時間30分

の時間を外部講師は使っているということになりますね。

シーズンや頻度

これも意外と見落としやすい点のひとつです。外部講師を「いつ」「どのくらい」入れるかということでも、謝礼の額は変わってきます。

外部講師が最も忙しいのはやはり吹奏楽コンクールシーズンの7〜8月(繁忙期)です。

そういった時期に外部講師を呼ぶ場合はどうしても謝礼も高くなりがちです。

逆に、比較的講師が暇な1〜4月(閑散期)は、いくらか低い金額で外部講師を呼ぶことができるかもしれません。

ちなみに、これは私自身の経験に基づく感覚的なものにはなってしまいますが、

繁忙期の謝礼=閑散期の謝礼+2,000円〜3,000円

くらいに思います。

続いては「頻度」についてです。これは、講師を依頼するのは「1回だけ」なのか「年間を通して」なのかということです。

場合にもよりますが、多くの場合「年間を通して」依頼する方が1回あたりの謝礼の額を抑えることができます。

パート指導と合奏指導(指揮)の違い

外部講師に「何を」見てほしいかによっても金額に差が出てきます。

基本的には、パートレッスンに比べると合奏指導の方が高くなる傾向にあります。

これは、合奏指導の方がパートレッスンに比べ、曲の分析など「レッスンに対して準備する時間と労力」が多くなるためです。

また、本番などでの「指揮」を外部講師にお願いする場合には、その労力に加えさらに「責任」が加わってくるため、さらにその額は高くなります。

外部講師の立場や実績

ここからは「プラスα編」として、講師によって大きく異なる要素について考えてみたいと思います。

まずは、「立場」や「実績」です。

「立場」については

・音芸大の学生
・音芸大の卒業生
・プロオーケストラプレーヤー
・いわゆる「レッスンプロ」と呼ばれる30〜50代の敏腕指導者

など、社会的な立場に関わってきます。それ以外にも、

・地域の吹奏楽団の奏者
・OB,OG

といった専門に学んではいないが趣味として続けていらっしゃるという方に外部講師を頼みたいということもあるかもしれません。

この場合は、その人にとっての「仕事」ではないため、謝礼の額も低くなってくるかと思います。

「立場」については、ある程度「年齢」とも繋がっている部分なので、その人の社会的な立場を除くと、若い人を呼ぶ方が相対的に低い謝礼額ということになります。

続いて「実績」についてですが、これは年齢や立場に関係なく、その講師が「今までにどんな成果を上げてきたか」ということになります。例えば、

・吹奏楽コンクール全国大会出場校を指導している
・万年「銅賞」の学校を一年で「金賞」にした

などがあり、当然栄誉ある実績を持っている講師の方が謝礼額も高くなる傾向にあります。そのため、全国の強豪校などにレッスンに伺っている人の場合、1回のレッスンが3〜5万円ということも決して珍しくありません。

また、「実績」については学校側が外部講師をどういった「目的」で呼ぼうとしているかにも関係してくるところなので、その吹奏楽部が外部講師に求めていることは何かによっても変動してくる部分といえます。

指導力

最後に外部講師の「指導力」です。先述の「実績」にも似ているところがありますが、単純な「実績」だけではわからない

・指導者の人柄、カリスマ性
・コミュニケーション能力や
・社会性

なども絡んでくるため、学校や顧問の先生、生徒・保護者によっても判断が異なる部分です。

いくら「実績」や「立場」がある講師でも、その部活の体質に合わない講師であれば、お金の無駄ですし、逆に「この人なら!」と思える講師に出会った場合は、その想い分の「謝礼」を払うことがその部活の今後のためにもなっていきます。

まとめ

と、ここまで長々と書いてしまいましたが「結局のところ謝礼はいくらが適切なのか」という当初の疑問について最後にまとめたいと思います。今回は、最もポピュラーと思われるレッスン形態で考えてみたいと思います。

外部講師の適正金額

講師:音芸大の卒業生(フリー奏者)

形態:単発のパートレッスン(繁忙期)

時間:3時間30分=パートレッスン2時間+移動時間1時間30分

時給:2,000円

交通費:1,000円

⇨2,000円×3時間30分+1,000円=8,000円

となり、これに(プラスα)として講師の「立場」「実績」「指導力」が上乗せされていきます。

もちろんこの8,000円という金額はあくまで一つの指標ですが、それでも、

講師側は自分の価値を「必要以上に安売りはしてはいけない」

と思いますし、

学校側は「この金額を大きく下回る時にはその分の誠意を見せる」

という努力をしてほしいなと思います。

今回は、「吹奏楽部外部講師の謝礼の適正金額」について考察してみました。

上記以外にも、学校の予算や講師の都合などそれぞれの条件は様々なため、決して一概にはまとめて考えることはできませんが、困っている方の参考になれば嬉しく思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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